当たり前を丁寧にしてみたら汗をかいた父

 

「やることが無いんや。」

 

80歳の父。退職して再就職してまた退職して。最後の仕事はシルバー雇用で身に着けた庭木の剪定。転んで腰骨にヒビが入り、リハビリをさぼって復帰できず、その後は家でゴロゴロ過ごしている。

 

充分働いたのだから、好きなことだけして過ごして良い年齢だとは傍目には思う。本を読むのも、碁を打つのも好き。市が運営する施設へ定期的に通って社会とわずかながらに繋がりを保ってはいる様子。けれど、毎朝起きてもやることが無いとぼやいている。

 

「毎日しんどいし、大変やったけど、あの頃が一番楽しかった」

 

仕事をしていた頃の自分を遠くに見つめ、苦笑いしながら語る父。

 

なるほど。

自由な時間だけあっても、

自由に使えるお小遣いがあるわけでもなく、

自由に動きまわれるほど健康なカラダでもない。

 

そんな父のぼやきをアテに焼肉を食べ、

ビールをグビグビ。

 

・・・その1時間前。

 

美味しい肉とビールの為に、

散歩してお腹を減らそうと連れ出す。

 

 

途中、

ベンチを見つける度びに

休憩しようと腰掛ける父

 

普段は

腰が痛い、膝が痛いと

母曰く、なんやかんや

座椅子に根を生やしたままだという父。

 

かなり体力が落ちているのが伺える。

父が休憩している間に

外反母趾の母に歩きのレッスン。

 

 

出発前、

骨盤(腰)と

大腿骨(太もも)と

脛骨(スネ)の連携を

 

下手っぴな絵を描いて

カラダの内側を見える化。

 

さらに実際に動いて体感してもらい、

そこからいざ散歩へ。

 

ベンチに腰掛ける母に向かって

「そんなドスンと座ったらあかん」

と、母に座り方を教える父(笑)

 

「偉そうに、、、」苦笑いの母。

 

「こんな汗かいたん久しぶりや」

清々しい顔をする父。

 

焼肉とビールを堪能して

店を出るときに

「あれ?杖はどうしたかな」と。

 

キョロキョロしながら

そもそも杖を持ってきてなかったことに

今頃気付くという(笑)。

 

 

 

骨に乗って歩いたり、

骨に乗って立ち座り。

 

ポイントはそれだけ。

骨を感じられるまで難しいとは思うけど。


当たり前に日々繰り返す動作を

最初は時間がかかっても

丁寧にやり続ければ

汗がかける良い運動にもなる(笑)

 

 

「タカの言うことは聞くから」

 

母はそう言うけれど

言い方、言い方(笑)

 

自分の親だし

健康でいてほしいけれど

命令も強制も、私はしない。

 

やる気のない人に

教えるほど面倒くさいことはない(笑)

 

本人が前向きなら

なんぼでも

繰り返し教えるけどね。

 

私が見てない時も

続けてくれるようになるまで

また帰るか(笑)